ソマリア

2009年11月23日

戦っている場合なのか

というわけでまいほりでーいずおーばーなんですが
ソマリアに戻れてませんでナイロビ待機中。

南ソマリアの援助関係者、ケニアに避難(ロイター11月23日)
おお、ロイターに載っている。

すでに一週間前に他の3名(なぜか記事では6名になってるんだけど)も
私と一緒に緊急避難していて、
先週の土曜日には担当下のアフマドのサブオフィスから
現地スタッフも避難させるほど危険状況悪化。

死者もかなり出ていて、大きな武器を積んだトラックが
ひっきりなしに到着している模様。
「誰と誰が戦争しているの?」という質問を受けたのですが
この地域はTFG(ソマリア暫定政権)が全く入っていない
武装勢力の支配下にあり、
Hizubul IslamとAl Shabaabという2大武装勢力
(ともにムスリム。というかソマリアにはムスリムしかいません)
が火花を散らしています。
わかりやすいかどうかは疑問だけど
例を挙げてみると、武田信玄と上杉謙信。戦国時代、群雄割拠。
この国の不幸な点は、国を統一する織田信長がでてこないこと。
今いる暫定政権の大統領も、決して満場一致で
選ばれているわけではなく、外国人に守られている状態。
戦国時代に、暴れん坊将軍がそこらじゅうで跋扈している時代に
元寇とポルトガルと銃が流れ込んできて
首都を取り囲んでいる、そんな図。
あ、モンゴルとポルトガルはただの例ですからね、
モンゴル人やポルトガル人はソマリアにはいませんよ。

今のソマリアの戦火に油を注ぐのが
某国からの武器の輸入と
AMISOMの平和維持軍(維持する平和があるのか大いに疑問なんだけど)
そして、アルカイダや中東からの支援。
ガチでリアルバトルなソマリアでは、
アルカイダの勢力が
アフガニスタンやパキスタンから
ソマリアに流れ込んできているそんなうわさも。

基本、強硬派ムスリムなのだけれど
同じAl-shabaabでもものすごく狂信派と比較的マイルドな方々がいて
よその地域ではそれこそ「女は働いてはいかん」といわれているところを
私の地域では特に歓迎もされないが、まぁよかろうな
黙認されているところを見ても、
完全な一枚岩な組織ではないのです。

アフマドはHizbol Islamでせっかく良好な関係を築けていたのに
これでShababの管轄下になってしまったのでまた関係作り直し。
どうやら外部情報によるとフレンドリーな人たちではないようで
一年半かけて積み重ねて信頼の山がどどーんと崩れ
一から作り直しを重ねて、そして崩れ、直しの
繰り返しにあるのがこの国の20年。
隣国ケニアやウガンダがどんどん発展をなし得ていくその間
どこに向かうのかもわからぬまま
何に勝つのかもわからぬまま
迷走を続ける、ソマリアよああソマリアよ。

なんだかんだ1年半になろうとしている今、
ダメダメぶりにため息が出つつ
愛着がわいている今。
本当にね、一部の人を除くと温かくて人懐っこくて
いい人たちなんだよ、ソマリア人って。
どの国にいってもしょうもない人たちと
どうにもならないゆがみとかほころびとかあるけれど
人間の基本は一緒、
そう信じて仕事をする。

雨降って地固まるを期待しよう。
しかしこの国は雨が降ると洪水になり
雨が止むと旱魃に悩まされる国でもあり。
ほんと、戦ってる場合じゃないんだけどなぁ。

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2009年11月09日

VOWソマリア

21世紀の世界の常識の枠を超える
不可解な声明を出す某武装勢力ですが
アルコール禁止とかポルノ禁止とかはまぁわかるとしても
ブラ禁止とか土曜日と日曜日が休日なのは禁止とか
爆走ぶりが読めなくなってきている今日この頃。
ついに先日、オフィシャルに宣言されたのがこれ↓

女は社会にでて働くべきではない。
3ヶ月以内に首にし、男を代わりに当てること

ベルリンの壁崩壊20周年の時代に、この暗黒の逆行ぶり。
曰く、女はもともと家庭で子供を育てるもので
社会にでて働くものではない、なんだそうです。
別に家庭に入る女子を否定しないけど
社会で働くの禁止しちゃう?

いまんところ、私の担当地域は何もいってこないのが幸い。
昨日も滑走路に某武装勢力が迎えに(監視か…)来てたしね。
帰れって言われなかったし。

あとは、休日を祝うのはダメだって。
くりすますとか世界AIDSデーとか世界女性の日とか世界先生の日とか。

先 生 の 日 っ て 何

一度じっくり腹を割って語り合ってみたい人たちNo.1
しかし、腹割かれるのは勘弁ね。



 





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2009年10月29日

おめでたい話?

若者が海賊と誘拐業で明け暮れている間
元気なソマリアの老人がやっていること

112歳のソマリア人が17歳と結婚するーCNN

一部の資料ではソマリア人の平均寿命は42歳とか46歳とか言われるのだけれど
それは圧倒的に出産時とか小さい子供の死亡率が平均寿命を下げているのであって
ソマリア人自体が早死なわけではないのだ。

フィールドにいても「ご長老!!」という方が
歯が全部しっかりあったり(しかも白い)
子供を叱り付けていたり、
ちょっと痛いくらいに握手してきたり←全然保守的でない
元気な老人に出会うことがよくある。
それにしても112歳って・・・
そして17歳って・・・
すでに5人の妻との間に18人の子供を設けている
この男性は記事によると

「I didn't force her, but used my experience to convince her of my love; and then we agreed to marry」
(彼女を強制はしなかったけれど、僕の(豊富な)経験を駆使して
僕が彼女を愛していることを説得したんだ。そして僕らは結婚することに決めたんだ」とか
「(18人の子供はいるけれど)さらに新しい妻と子供をつくりたい」

・・・という現役ぶり!
彼女が大きくなるまで待って結婚、なんだそうです。
なんかさ、途上国のリゾートなんかによく見られる
高齢でアグリーな外国人が
金の力に任せて若い現地の女の子をはべらせてる様子ってのは
「どうなの」と思う私も
ここまでつきぬけちゃうと

じいちゃんがんばれ!って気になるね。

女性の地位がどうとかってよりは
愛には年齢は関係ない、というほうがこの場合は焦点か、と。

でもやっぱ彼女自身の肉声ではなくて
”彼女の家族が”「花嫁はハッピーよ」というところが
気になるところではあるんだけれど。





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2009年10月19日

ソマリアクイズショー

キスマヨ(うちの担当地域ですが治安の悪化で
昨年10月から現地スタッフすら入れないところ)で
断食月明けのクイズショーが開催拍手

この、シャバブってのはありとあらゆる娯楽を禁止する
(酒とかドラックもそうだし、DVDとか音楽もNG)集団なので
クイズショーなんて、とっても画期的!!

・・・と思ったら、内容は
聖戦に参加するのを促進するため
カリビアンクルーズじゃなくて、
聖戦へのチケット。
要するにリクルートミッションの形を変えたもの。
シャバブも考えるなー。
優秀な人材を集めるのに、
冬の時代なのはソマリアも一緒なのか。

優勝者には

AK47、弾薬、手榴弾をプレゼントォォォ

・・・困った

Some of the winners were awarded other prizes, including computers.
(ほかの優勝者には、別の賞が与えられた。コンピューターなど)

ええええ、AK47よりコンピューターのほうがよくない?
でもネットの接続できるのだろうか。
Windows95が入ってたりして。

つっこみどころ満載のクイズショー。

武装勢力主催のクイズショー賞金は武器


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2009年10月01日

世界の真ん中

朝6時に携帯がなる

キスマヨで戦闘が始まったよ

昨日から携帯メール(SMS)で逐一動きを報告受けてたんだけれど
いよいよXデー。しかし、ソマリアはXデー続き。
今年に入って何度Crossfireが起きたことか。
この戦闘は、武装勢力同士での衝突。
先日のアフリカ連合軍に武装勢力が自爆テロしたものとは対象が別。
ソマリアは「群雄割拠」なのだ。
91年に当時の大統領が追い出されてから
無政府状態にある。
「氏族」を中心にした社会構成と各地にいろんな武装勢力が
あるんだけれど織田信長がいないまま、20年近くきてしまった。
今の暫定政権のトップは、穏健派のムスリムなのだけれど
ソマリア全土で支持を受けるわけはなく
首都モガディシオでウガンダやルワンダの
アフリカ連合軍に守られて生活している。
今回の戦闘は武装勢力とAl-shababとHizul Islamのもの。

人が死ぬことも、銃の音も
慣れてしまうと
神経の中枢が痛むことがなくなる。
戦争も、飢餓も知らなければ
心がしぼむことがない。
いや、想像力を働かせることはできるのだけれど
それを「自分の問題」として共感するには
現実との距離がありすぎる。
インターネットやテレビでとりこめる現実は
自分の生活と関係ない次元で進行していく。
映画のスクリーンのように。

知り合いが死んだら悲しくて辛くても
知らない人たちが知らない場所でどんどん死んでいく事実に
どれだけの人が本当に心を痛ませるだろう。

食糧配給も同様。
実際行ったことのない場所で
人がどんなに餓えていても
それこそ「世界中でいまや10億人の人が餓えている」
と数字が96年の8億から今年は2億増えている
この悪化する現状に対して
今日のごはんが困らない人たちに
「実感せよ」といってもとても難しいことだ。

実感していたとしても、じゃあ何をどうするかというには
また別のエネルギーと下準備と根回しがいる。
政治的に「中立」で、人道的に活動しなければならない
私たちも、大義名分と現実の間にメビウスの輪があって
たどりつけそうなのに、たどりつけないもどかしさがある。
政治的に完全に、独立して、ただ人道的に活動するのは不可能なことだ。
私たちがやることもやらないことも、すべて政治につながっていく。

間違いを犯さないために、最初っから危険に手を出さないというのは
一つの解決策ではある。こちら側の。
しかし、向こう側に取り掛からなければならない問題が
いっぱいあるときに、私たちが完全に撤退してしまったら
どれだけの人が犠牲になるのだろう。
一人の人が目の前で問題があったら助けられても
10億の人が問題がある今を
「教科書」の乾いた過去や「新聞」のまとめられた統計で
終わらせてしまってはいけない。
「ライブ」な事実を、どう扱っていくか。
社会情勢は「なまもの」だ。
扱いかたによって、生きるし、腐る。

こういう意見もあるのだ
「ためしに一旦全部撤退してみて、どれだけの惨状になるかみてみよう
それから向こうから頼まれたら助けようではないか」
今私たちのいるこの地球で起こっていることは
ゲームでもシュミレーションでもないのだ。
惨状になってから行動を起こしたのでは遅いのだ。

http://www.nytimes.com/2009/10/2/world/africa/02somalia.html?_r=1&ref=world
アメリカがソマリアへの援助を延期ー食糧がテロリストに
利用される懸念?

現実問題として、食糧を必要としている人たちがいて
そのエリアは武装勢力が支配している。
食糧援助が武装勢力にわたる可能性をゼロだとはいえない中で
「でも必要な人にわたっているからいいじゃないか」では
済まされないのはわかっている。
私が活動するエリアはまさにこのニューヨークタイムズがいうところの
Al-shabab(テロリスト)支配地域だ。そしてHizul-Islamもいる。
悪化する現状と増加するんニーズは私はよくわかっているし、
食糧が「悪用」される可能性も認識している。
だから現場にいって、仕事ができる環境に一刻も早く行きたいのだ。

でもねー私がこうやって日本語のブログで
「世界の現状に想像力を働かよう!」とか
「もっと援助を増やしてください!」とか
わーわー吼えたって
どこにも何にも届かないのは100も承知。
じゃあ、なんでブログに書くかって言うと
自分の意見をまとめる練習みたいなものなわけ。
世界の現状を想像するのは難しいけれど
解決策をみつけるのはもっと難しいけれど
とりあえず自分のできる場所で、世界にアプローチするしかない。
アプローチするには、まず知ることから。
そしてただ情報を丸呑み鵜呑みにするんじゃなくて
自分なりに分析して、ストーリーを解析していく。
いろんな解釈がある場所で、芯がぶれないように
日々思考を練っておく。

戦いが現代進行形で進む中で、こうやって国境を隔てた
偏狭の地で待機なわけだが、
ナイロビやニューヨークでの資金の流れやドナーの一挙一動を左手に。
スタッフの送ってくる携帯メールや報告の「戦争進捗状況」を右手に。
なんだか私は、動く世界のちょうどまんなかにはさまっているなぁ
と感じるのである。動けないのだけれど、すごくビビットに動きを
感じられる。ベレトウェインのオフィスから緊急避難してきた
デンマーク人の同僚は
「俺、まさに撃たれそうなところで逃げてきたよー」とワジヤに
戻ってくるし、3ヶ月前に誘拐されたNGOのスタッフを助けに
うちのスタッフがいったりする。

来月の食糧配給計画も提出ずみ。担当地域が拡大したから
スタッフも新しくなる。漫画的にいうと指をぽきぽき折りながら
チャンスを待っているところ。待ってろよ、 ソマリア。







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2009年09月26日

ソマリアなう

154966dc.jpg


ソマリアの状況がいつもに増してかんばしくないので
今はナイロビ待機中。

スーダン人の同僚とすし食べにいって、
友達の誕生日パーティで
メキシコやコロンビアの友人たちとサルサを踊って
深夜にカジノにいって
休日にコンピューターつなげて
MIXIのアプリの国旗マスターなんかやっていると
世界もソマリアもすごくすごく遠い。
世界に出ているのに、世界の中にいない今。
それって自分がここだと
完全に消費者の側に回っているからなのかもしれない。

ネットや電話を通して聞くソマリアは
限りなく灰色と黄土色で、まるで昔の戦争映画のように
ほこりと怒号にあふれている。
人が死ぬということがとても近くにある
現在進行形のリアルバトル。
先週、モガディシオ沖から飛んだアメリカのヘリコプターが
98年のアメリカ大使館の襲撃に関わったとされるアルカイダの
関係者を襲撃
そして今週、盗まれた国連カーを使った自爆テロで
15人のアフリカ連合軍(首都で暫定政権の大統領がいるヴィラ
ソマリアを警護している)の平和維持軍の軍人を殺害。
私のオフィスがあるブアレにも
大きな武器をたくさんもった外国人部隊
(パキスタン人とかイエメン人とか)が通る。
そんな世界が現代進行形で実際にあるのだ。
スタッフや知り合いからSMSや電話で
今夜の攻撃計画を知ったりする。
テレビや新聞よりも先にあまりにも生々しい情報が
飛び込んでくる。

かたや隣国のナイロビで
お天気にも恵まれて
きれいに着飾ったたくさんの男女が
町に繰り出し、夜も眠らない。

同じ地球上で、飛行機で数時間の隣の国で
こんなにも違うのだ。
ソマリアとケニアを行ったり来たりしながら
Window of opportunity がくるのを待っている今。
体を鍛えて、ちゃんと準備して
日が昇るのをじっと待つ。
いや、じっとでもないか
ビールを飲みながら、音楽を聴きながら。
爪を研ぐ。

こんなにも世の中にも大きな問題が山積みなのに
自分ができることって本当に少ないなぁ。
でも肩に力を入れて勝手に圧倒されたりしない。
自分のできることを、自分の足がついている場所から。

せっかくちょっと時間があるので
しっかりソマリアのこと勉強してブログで発表しよう。
何食べた~誰と会った~
うらら~とかそんなんばっかじゃなくて
せっかくソマリアにいるんだから(今いないけど)
徹底して勉強してみよう。
あーモチベーションあがってきた!

日本にいるとやっぱり遠いソマリアを
読む人に身近に感じてもらえたらいいなと思う。
ソマリアについてもっと熱心に発信します。

at 19:32|PermalinkComments(2)